リハビリの生徒さん

2015年より3年間、アコースティックギターを受講して頂いたOさん(60代の生徒さん)よりお電話があり、入院のためしばらくレッスンはお休みということになりました。


Oさんは若い頃は海外でも仕事を行い、健康でとても元気だったそうです。

数年前から体の異変を感じ、検査の結果パーキンソン病ということが判明して、治療の一環として3年前から私のギター教室にお越しいただきました。

学生の頃から音楽が大好きで、ビートルズの武道館公演も生で観に行かれたそうです!


いつも明るく、ユーモアのあるOさん、薬の効きが良くない日でも前向きで、常にすごい集中力で受講していただきました。


早くご回復されてまたご一緒にギターを弾いて、お話しがしたいです。


パーキンソン病の方のレッスンは初めての経験でしたので、病状や治療方法などについて調べたり聞いたりしていくつかのパターンを用意して準備を行いました。通常レッスンとは違ったトレーニングメニューも考えて、カリキュラムを組み立てました。


レッスンの時に一番気を付ける事は、パーキンソン病の症状の1つで『姿勢反射障害』といって、体のバランスが保てなくなり転倒しやすくなるということです。特にギターの指板を見ながらコードチェンジに集中していると一層前屈みになり転倒してしまいそうな時が何度もありました。

最初の頃は私がOさんの側に立ち、伴奏の音量に負けないように大きな声で『今体が左に傾き始めましたよ~!』とか『体勢を起こしてくださ~い!』などと変化があればその都度すぐに声をかけて、いつでもOさんの体を支えられるように待機しながら行っていましたが、ここ最近はOさんの前方を囲うように教室の他の椅子の腰掛けクッション部分を向けて回りに置き、そこにギターのボディやヘッドを乗せて固定して行うようにしました。

シンプルですが、このやり方の方がOさんも私を気にせずに思う存分に弾けるし、私の大声でビートルズナンバーを台無しにせずに済むようになりました♪


この方法で前に倒れそうになる事は無くなりました。


課題曲はOさんのリクエストで『想いでの渚』『あの素晴らしい愛をもう一度』『若い広場』などのコード進行を簡単にしたものや、私からシンプルなオススメ曲として『今日の日はさようなら』『イマジン』『ヘイジュード』なども簡単にアレンジをして行いました。


最初の1年目辺りは、来る度にどんどん弾けるようになっていたので、私のレッスン・マジックか!?と、

【※いや、Oさんの努力が殆どかと…】

徐々に難易度を僅かにアップする予定でしたが、症状の一つの特徴でもある、【薬の効き具合が日によって(時間帯にもよる様です)とてもムラがある】という事がネックとなり、当面は基礎トレーニングメニューと今まで行ってきた課題曲を出来るだけキープする方向で調整する事にしました。


前回のレッスンではメトロノームに合わせて難なく弾けていた運指のトレーニングメニューも翌週のレッスンでは殆ど弾けない、という事も何回かありました。


しばらくレッスンを行う内に、

その日のコンディションは入室時のOさんの歩き方でなんとなく分かるようになりました。


Oさんはいつも明るく、

先日も『桑田さんのビートルズの面白い替え歌がYouTubeにあったので聴いてみてください。』

と楽しそうに、urlの書いてある紙をくれたのが印象的でした。


そんな矢先、入院する為当面お休みします、とあまり元気のない声でお電話がありました。


『今まで本当にお世話になりました。毎回とても楽しかったです。』


と最後におっしゃっていたので、胸が熱くなりました。


時には歩きづらそうに、ギターを抱えたまま教室の壁にぶつかったり、時には思い出話を、ジョークを交えながら話して頂いたり、いつもすごい集中力で全力でギターを弾いていたOさんの姿が、

う懐かしいです。


この3年間通っていただき、感謝しています。

私もとても勉強になりました。


とても良い経験をさせていただきました。


しばらくして、体調が落ち着きましたら、また必ずお会いしたいと思っています。